第22回ゲストトーク 岡島悦子氏

リーダーを創出する「経営者のかかりつけ医」

改めまして岡島です。まず、プロノバはよく「外資系ですか?」と言われるんですが、そもそも「プロの場」って読むんですね。「経営のプロの場」という意味です。そこで、経営者たちのかかりつけ医をやっています。経営者の壁打ちみたいなことをやったり、次世代を抜擢して育てたり、次の世代の経営者どう作っていくかの相談を受けたり、支援プログラムを作ったり、「人」×「リーダーシップ」ということを中心に仕事をしています。

例えば、トップに立つ人はいろんな会合に出たり、いろんな人に会うので、遠くのビジョンがよく見えるようになりますす。ところが、ナンバー2はそこまで外に出て行くことはありませんし、「組織の人間を守る」という意識の方が強くなってしまう。そうすると、お互いの意識に開きが生まれてしまうんですね。そこで一番重要なのは、経営のトップ自身が事業の成長のボトルネックにならないようにすること。そこで私は、経営者の処方箋を書きながら、経営者自身が自分を客観的に見られるようにするお手伝いをしている感じです。

企業が大きくなるとき、やっぱりトップの方は事業開発をやりたくなるんです。ただ、それを実現するには事業開発だけではなく、それに併せて組織も育てなくてはいけない。でも、事業はとても進んでるのに、組織が小さい子ども服を着たままになってるケースはよくありますし、経営者そのものが育っていないというケースもあります。私は12年間「経営チームを作る」というコンサルティングをやってきていますが、そういう場合、今まではどうしていたかというと、見切っちゃうんですね。ただ、日本ではプロ経営者を外から入れるということがあまりうまくいかないので、今は内側から育てるのと、経営者そのものを成長させる仕事ばかりやっている感じです。

女性活躍推進度の低さは「出世意欲」が原因!?

また私は、ダボス会議の「Young Global Leader」に選んでいただいたり、森まさこ大臣の下で「ダイバーシティ推進」の活動をしたり、昨年からは丸井とアステラス製薬というところの社外取締役をやっていたりいろいろと活動をしているんですが、共通しているのは「女性活躍推進」なんですね。

日本の女性活躍推進度は全世界でも105位、106位あたり。世界的に見ても、女性の社会進出が非常に遅れているんです。でも、なぜ女性の活躍が進んでいないのか。昨年5000人ぐらいと80社でワークショップを実施してわかったんですが、その問題のひとつが「女性社員そのものに出世意欲がない」ということ。「管理職なりませんか」と言われると「いやいや、まだまだ……」と言ってしまう。女子はなんとなく育てられ方から「2回ぐらい断った方がいい」というのを計算でわかっているんです。でも、最近はパワハラと疑われることもあるから、上司の男性社員たちも2回断られたらそれ以上言えない。その結果、仮に新人のときに優秀な子だったとしても、27歳ぐらいのときに完全に追い抜かれてしまう。どんどん周回遅れになっていくから、管理職になるのも遅い。そして、いざ管理職を始めようとすると出産のタイミングに重なる。でも、仕事に復帰したら、人材は補充されていて、部署もアウェー。この三重苦になってしまうんです。だから、65%の女性が仕事を辞めてしまうんです。

そこで、その問題を解消させるために、去年1年間いろんな会社で「20代に3場所プロジェクト」というのをやってもらいました。つまり、3つぐらいの部署をローテーションして回ってもらうんです。すると、出産して会社に戻ったとしてもいくつかは場所があるわけじゃないですか。

ただ、このような前倒しのキャリア作りをしていると、問題も出てくる。例えば丸井には4、50代の女性たちがたくさんは働いているんですが、この手の話をすると「今さら『前倒しのキャリア』と言われても……」という空気になってしまうんです。そういう人たちには、後進を育てることに力を入れてもらっています。その一方で、新陳代謝も必要なので、ある程度の比率には「管理職に上がってください」ということを言うようにしています。時間がかかる作業ですが、それでもだいぶ社内は変わってきたな、という印象ですね。

女性活躍推進問題は想像以上に根が深いんですが、やり続けなければ結果は生まれてきません。今はそんな気持ちで、活動を進めています。

岡島悦子(おかじま・えつこ)(株式会社プロノバ代表取締役社長 / グロービス経営大学院教授 / アステラス製薬株式会社社外取締役 / 株式会社丸井グループ社外取締役)

株式会社プロノバ代表取締役社長。筑波大学国際関係学類卒業、ハーバード大学経営大学院修士課程修了(MBA)。2002年、グロービス・グループの経営人材紹介サービス会社であるグロービス・マネジメント・バンク事業立上げに参画。’05年より代表取締役。’07年プロノバを設立し代表取締役就任。’14年よりアステラス製薬株式会社社外取締役、株式会社丸井グループ社外取締役。ダボス会議から「Young Global Leader ’07」に選出される。

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