スペイン特別編ゲストトーク 外尾悦郎氏

人間が地球上でどうやって生き抜くか、世界中が一緒に考える時代が来た

(バルセロナにあるサグラダ・ファミリア、2000年に完成した『生誕の門』の前にて)

今日、みなさんに覚えて帰っていっていただきたい事は二つあります。
一つ目は、我々はいくつかの問題を同時に解決していかなければいけない、ということ。
二つ目は、何が起こってもオリジンに戻って始める、ということ。

いくつかの問題を同時に解決していかなければいけない

ガウディは『機能』・『構造』・『象徴』という現代人が別々のテーマとして捉えてしまう3つのことを、一つの答えとして見つけました。
分かりやすい例で言うと、生誕の門の柱の一番下に亀の彫刻があります。
柱の台座という『構造』としての必要性、生誕の門に降り注いだ雨が柱に集められ、中を通過して亀の口から吐き出される、雨どいとしての『機能』、教会をカメのようにゆっくり、でも休まず作るということの『象徴』として表現しています。

レクチャーを受ける7年会メンバー。足元にあるのが亀の彫刻

この教会の中の柱は1本1本の柱が傾いています。建築界では柱は垂直なものだというのが常識になっていました。地球が引力を持っていて、その力を建築家は敵だと思っているからです。
しかし、ガウディは建築家たちが敵だと思っていた引力を100パーセント味方にしたのです。さて、どうやって最大の敵を見方にしたか。それは「従順に自然の言うことを聞く」ということ。それがガウディの「逆さ吊り実験」です。天井に両端を固定した糸がいくつも吊下げ、その先に錘をぶら下げました。それを写真に撮って、上下ひっくり返して、その通りにつみ上げていったのです。昔から日本人の思想の中にある「自然に勝つことはできない」ということをガウディはちゃんと理解していたからです。

ある繊細な詩人が『サグラダファミリアは天国に引っ張られている教会』と言っています。
『天国に引っ張られている』というのは『未来』を意味します。

我々は子供たちよりも先に天国に行くわけですが、『我々が何をしなければいけないか?地球上で人類がどうやってこれからも生き抜くか?』を考えていかなければいけません。
これまで地球上では、それぞれの国がそれぞれの利害でバラバラにやってきました。しかし、地球上にはそれぞれの国だけでは解決できない問題が多数あり、人類が一緒に考えなければいけない時代が来ています。そのヒントがガウディにあると思っています。

ガウディのオリジンと日本人のオリジン

聖堂の側壁の塔の上のフルーツと葉っぱの彫刻を依頼され、掘りました。この彫刻を彫るときに意味を知りたいと思い、考えました。

何が起こってもオリジンに戻って始める

サグラダ・ファミリアとは? …サグラダファミリアとは、教会である。

では、教会は何をするところか? …教会はミサを行うところである。

では、ミサとは? …神父様の口を通して、イエス・キリストや神の言葉が語られ、自分の知恵を養い、人生を豊かにするもの。

日本語で言葉は、「言う葉」「言の葉」と書きます。葉っぱは実に養分を与えて、実らせます。言葉は人の魂を豊かに実らせるものです。いい言葉で人は育ちます。ガウディはこのようない思いを込めたのではないかと考えました。
ガウディがなぜ日本語の「言葉」を知らなくて発想できたか?それは日本人と同じく、自然からすべて発想しているからです。それがガウディの「オリジン」。日本人の「オリジン」も自然なのです。

日本人のオリジン「自然」から発想していく限り、日本の文化はこれからも進んでいくはずです。しかし、人間が人間の社会だけでこれから生きていこうとしたときの問題がいろいろ出てきます。そういうときに常にオリジンに戻るということが必要です。

ガウディの見ている方向を見なければ、ガウディを理解することはできません。
好きな人が見ている方向を見るということが愛情です。だから、愛情がないといい仕事ができない、とガウディは言っています。人は愛情がなければ表面だけ見てしまいます。

人間は賢い人もそうではない人もそう大きな差はありません。それよりも自分を引っ張っていってくれる、本当のところまで連れていってくれる、それが愛情です。

現代では人は脳で話して脳で理解しているといわれていますが、時々、脳と耳を通してストンと落ちて納得できることがあります。それが人間が本当に理解し合えるということです。

理解し合えるというのは、分かったから信じ合えるのではなく、信じているから分かり合えるのです。

松嶋啓介

松嶋啓介's EYE

外尾さんの生の声を直接バルセロナのサクラダファミリアで聞こう!!と言うだけで企画したこの特別編!!
バルセロナにも関わらず多くの参加者がいて、沢山の言葉を聞く事ができてとても充実していたのではないでしょうか?

僕自身は、外尾さんとは福岡の大先輩として、、、数年前共通の知人を介して紹介して頂きました。それからほぼ毎年お会いする関係を築かせて頂き、本当多くの事を学ばさせて頂いています。
ここ数年、僕に一番の衝撃と影響を与えてくださった恩人でもあり、外尾さんとの会話はいつも多くの気づきを得ます。

その中でも、「素晴らしい文化を持った日本人がそろそろ世界に対してちゃんとした発言をしなければいけないんだよ!」って言われたのは今でも僕の心に残っています。海外に住んでいる日本人として、何か共感できるものがありました。
外尾さんの言葉は本当に心に響きます。
今回の参加者の方も心に響いた事がいくつもあったのではないでしょうか?
是非今度は東京で、また皆と一緒にお話しできる機会を設けられればと思っています。

77年会の目的の一つである、これからの話をしようっていうのも、外尾さんの言う、「我々は一つにならならないといけけないし、一緒に同じ方向を向かないきゃいけない、ガウディの見ていた方向、それは未来」と同じなのではないかと思います。

外尾 悦郎(そとお・えつろう)(彫刻家)

1953年福岡県出身。石工になるべく25歳でバルセロナに移住し35年。現在はバルセロナのサグラダファミリアにて主任彫刻家を務めている。2000年に完成したサクラダファミリアの生誕の門は、世界遺産に登録されている。

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